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『BANANA FISH』を読みながらKinKi Kidsを聞くと最高

吉田秋生さんの漫画『BANANA FISH』本編を読み終えた。物語が終わるのが受け入れられなくて、一番最後のページを開いたまましばらくの間硬直してしまった。こんな事は初めてだ。連休最終日の夜になんか読むんじゃなかった、最終巻を読み終えたら爽快な気分で眠りにつけると思っていた。その全く逆で、眠れなくなった。

最終巻の一番最後に劇的胸熱な展開を持ってくるの凄くないですか?普通は物語って、ラストよりも一歩手前にクライマックスのピークがあって、少し下山したところで落ち着いて終わるものだと思ってたんだけど『BANANA FISH』は、最後の最後にピークがきたところでスパッと終わる感じがして。第1巻から最終巻まで、ずっとハラハラしっぱなし、夢中になりっぱなしでダーッと駆け抜けたような感覚がありました。

まだ「ANOTHER STORY」は読んでいないのですが、読んだら自分はどうなってしまうんだ?となるほどに心が持っていかれています。

 

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アッシュと英二、混ざり合わない2人の運命を描く『BANANA FISH

BANANA FISH』は、アメリカのダウンタウンに集まるストリート・ギャングをまとめ上げるリーダー、アッシュ・リンクスが主人公の物語。

アッシュは並外れた才能と見る者を思わず惹きつける佇まいをもってマフィアのボスであるディノ・ゴルツィネからの寵愛を受け支配下に置かれるものの、そこから逃れようともがき、自分を育ててくれた兄、そして自分の運命をも狂わせた“BANANA FISH”の正体を暴こうと奮闘する。そして、日本で挫折を経験し、カメラマンのアシスタントとして渡米してきた奥村英二と出会い、英二だけには心を許すアッシュだったが、ゴルツィネの策略や、アッシュを取り巻く様々な思惑に巻き込まれていくうちに、英二にまで危険が及んでしまう。次々に降りかかる危機をアッシュ、そして英二たちはどう乗り越えていくのか?というお話です。

2018年にアニメ化もされていて、Amazon Primeで全エピソード見られます。

 


www.youtube.com

 

bananafish.tv

私は運命を感じる2人組の関係性が好きだ。キング・オブ・デュオであるKinKi Kidsを筆頭に、最近ではKristSingto、BrightWinといったタイBLドラマでカップルを演じた俳優陣にもハマったり、応援しているグループ内の「辰松(ふぉ〜ゆ〜)」「MoonSun(MAMAMOO)」といったペアの動向にも集中して意識を向けたりと、“2人組の関係性”がめちゃめちゃ好きだという自覚はありつつ「なぜこんなにも2人組の関係性に私は熱狂を…?」という事を常々思っていて。

でも『BANANA FISH』のアッシュと英二の関係性を見て、強く結びつこうとするけれど絶対に混ざり合わない、みたいなところにヒリヒリしているということに気づきました。

決して混ざり合わない「個と個」でありながらも、目はお互いの方を向き「僕/俺/私にとっての“君”は君しかいない、君がどう思っていようと」と「双方向に」思い合っている2人が好きなんだな〜〜と改めて思った。お互いに相手のことを考えているけど、その主語が自分である感じが好きだ。

「俺とお前は住む世界が違う」と言って英二をひたすら安全な世界へ戻そうとするアッシュと、そんなアッシュの言葉を微塵も気にせずに、アッシュを安全な世界へ連れて行こうとする英二。

この2人はお互いに「君に銃を持たせたくない」と思っているけれど、その響き方はそれぞれ異なる。アッシュは、「君に銃を持たせたくない」からこそ自分と英二は一緒にいない方がいいと思っていて、英二は、「君に銃を持たせたくない」からこそ自分と一緒に安全な場所へ行った方がいいと思っていた。向いている方向は同じ、相手へ向けている愛情も同じだけど、2人の感情は混ざり合わない。

アッシュは英二の優しさや愛を感じれば感じるほど距離を実感させられていたし、英二はアッシュの途方もない痛みを一緒にいる事で癒し、彼の運命を変えられると信じていた。端的に言うと「すれ違い」なんだけど、結実しない、融合しないからこそ、それぞれの思いの強さが伝わってくる感じすらある。

それに、物語の随所に散りばめられた、見えるところにいなくても話さなくてもお互いの気持ちを理解しているという確信や信頼関係、相手に対して何かを求める事なく自分の労力や損失を惜しまない真摯さには夢を感じます。夢、というか憧れ、というかもはやロマン……?

関係性に対する疑いのなさって、そんなに簡単に芽生えるものではないという感覚が私の中にあるからかもしれないけど、英二が月龍に言った「僕がアッシュを大切に思っているように彼もそう思ってくれてた」とか、アッシュの「ただ1人だけはなんの見返りもなくオレを気にかけてくれる人間がいる」って確信を持って言える関係性って単純にすごいなって思うんですよね。

BANANA FISH』とのペアリングにおすすめなKinKi Kidsプレイリスト

私はKinKi Kidsのファンとして、彼らが何年にもわたって築き上げてきた信頼関係に対しても日々「すごい」とか、「愛」「運命」を感じており、彼らの2人組として歩んできた軌跡や現在、2人が歌う楽曲と世界観に浸りまくっているわけなのですが、KinKi Kids新曲の「アン/ペア」を聞いていた時にふと「あら、なんだかこの感じって『BANANA FISH』では?」と思ったのです。

ここに至るまで前置きが長くなりましたが、『BANANA FISH』の世界にすっかり没入し、この思いつきに辿り着いたことが、今このブログを書いている理由です。

というわけで、やや唐突ですが『BANANA FISH』とKinKi Kidsのペアリングの良さについて書きたいと思います。運命を感じる2人組大好き!な私が「これは…光一さんと剛さんの2人の関係性に当てはまる一方で、捉えようによってはアッシュと英二では??っていうかこれめちゃめちゃアッシュと英二では??」となったKinKi Kidsの楽曲たちを挙げていきます。

BANANA FISH』を読みながら聞いたり、すぐに漫画を取り出して読めないところで聞きながらアッシュと英二の物語を思い出したりするのにおすすめしたい!!何しろ『BANANA FISH』とKinKi Kids、超絶相性がいい……。ビール×枝豆、ビール×餃子、ビール×唐揚げぐらい相性の良いペアリングよ……。今ではこれらの曲を聞いただけでアッシュと英二の姿が脳内に浮かんできます。

・アン/ペア(KinKi Kids「アン/ペア」)

焦がれるほど繋がりたくても中々コネクトできない2人の関係性を接触不良のプラグとコードになぞらえた「アン/ペア」。“焼け焦げたっていいから繋がりたい”という、痛みを顧みずに2人でいようとする強い引力のようなものに、「本当は相手にそばにいてほしい」アッシュと英二の痛切な願いが重なる。

「アン/ペア」では、心の中には確かにお互いが“存在”しているのに、“不在”と隣り合わせになっている感覚がある。「夢の中で出会えたって 現実は何も変わりやしないや」「生ぬるい残像の感触 思い出すだけで報われやしないや」という冒頭の歌詞に象徴的なように、「そこにいるはずだったのに今はいない」ことへの絶望感、どうにもならないもどかしさが全編に漂っていて、その“どうにもならなさ”を力ずくで踏み越えてでも相手とつながり合おうとする。

BANANA FISH』では、圧倒的な強さと才能を持つアッシュの“唯一の弱点”として英二が存在している。客観的に見ればアッシュと英二が一緒にいる事は双方にとってリスキーで望ましくなく、また、弱点であるがゆえに対立する人々から英二は常に標的にされる。アッシュと英二の関係性はいつも危険にさらされていて、別離した方がより簡単で安全だった。でも、それでもアッシュは英二を、英二はアッシュを自ら守るために側に行こうとするし、何よりただ「そばにいたい」という気持ちによって一緒にいようとする。なんかこの、物理的に関係性を阻むものを幾度となく乗り越えようとするアッシュと英二の感じが、「アン/ペア」のプラグとコードだな、と思う。

もう一つ、『BANANA FISH』のコマ割りで、2コマ横並びでアッシュのコマと英二のコマが向き合ってる構図が印象的だった。何回か出てきたと思うんだけど、なんというか2人の間にコマの線による壁が挟まる事で、埋まらない距離みたいなものを表現しているのかなあ、と。

で、「アン/ペア」のMVでも同じような視覚効果が見て取れるんだよね。KinKi Kidsは俯瞰で見ると同じ空間にいるのに、剛さんがいる場所と光一さんがいる場所は分厚い壁で区切られている。分厚い壁が物理的な隔たりを作り、交わらないことの暗示になっているのは明らか。それぞれの空間の中でお互いに違うダンスを踊っているんだけど、たまに同じような動きをする場面や、壁の向こうにいる“もう1人”の存在を伺わせるような視線を投げる場面がある。

KinKi Kids - アン/ペア [Official Music Video(short ver.)] - YouTube

(「アン/ペア」のMVはフルで見るともっとヒリヒリするので初回盤Aゲットをおすすめします。あと、初回盤Bは「アン/ペア」生みの親である堂島孝平さんとKinKi Kids渾身のコミカルなプラグとコードの特典映像がついてるのでBもおすすめです。通常盤はカップリングがマジでいい、本当に。“BrotherじゃなくてLoverになりたい”「Dandelion」大好き。)

あとは、単純に英二もアッシュも「最近なんかつれないぜ どうかしちゃったんだろ Baby You」ってお互いに言ってそうじゃないですか??

・勇敢な君に(KinKi Kids「L album」)

英二からアッシュに向けての気持ちがピタッと当てはまる。っていうかこれ全部の歌詞ぴったりだな……。歌詞の中の「勇敢な君」がアッシュを指していると考えると、アッシュが今まで経験してきた暴力とか、常に彼の中にあった罪の意識、後悔、どうにもならないという絶望的な気持ちや孤独が浮き彫りになる。そして、「勇敢な君に愛を送るよ 明日も強くあれ」という歌詞は、それを丸ごと包み込むようにして受け入れて、より深く理解し共感して寄り添おうとする、そしてアッシュを自ら守ろうとする英二の姿勢そのものにも思える。
死ぬか生きるかの世界でずっと生き続けてきたアッシュは、何度も英二に対して「住む世界が違う」と言って自分の気持ちとは裏腹に英二を突き放そうとするけど、英二はその度にそれを踏み越えてアッシュのそばにいようとするし、なんなら2人で安全なところに行こうとするじゃないですか?「勇敢な君に」には、「もうこれ以上進めないなら 二人で引き返すのさ」っていう歌詞も出てくる。
まさに、「勇敢な君に」は、アッシュの心が読めない時もあるけど、ただただ常に寄り添おうとする英二の気持ちじゃん……。Aメロ頭のフレーズ「返事がないね 君の心」「一番の友達は僕さ」とかまさにそうじゃんね???いま曲を聞きながら書いてるんですがもう、めっちゃ頭の中が『BANANA FISH』。今すぐ読み返したい。

・aeon(KinKi Kids「M album」)

これはもう『BANANA FISH』最終巻のための歌じゃん……。めっちゃ泣くやつ……。「さよならを選べない僕には もう二度と次の朝が訪れずに」ですよ?!さよならを選ばずに終わりを遂げた愛はどこへ向かうのか、とか、溢れる思いが雫となって心の行き来する川になる、といった感じのことを歌っているんだけど、文字通り聞いてると色んな思い出や思いとかが駆け巡るように溢れてくる。
アッシュと英二のコミカルな場面とか、アッシュが英二に対して、英二がアッシュに対してかけてきた言葉の数々とか色々思い出しつつ、”終わった”という事実は眼前にある。……なんかもう無理………、曲聞いてるだけでもう泣けてくる……説明不可……。聞いて……。

キミハカルマ(KinKi KidsH album -H・A・N・D-」)

「廃墟に迷い込んだ天使は 泣かずに月を見ている」、なおかつ「迷わない 嘆かない きっと帰らない」っていう冒頭の歌詞の時点でこの天使はもうアッシュ。あと「サヨナラ この手を放して」は、アッシュが「サヨナラ」って言った場面を彷彿させます。そのあと英二が「サヨナラなんて、そんな日本語教えるんじゃなかった」って言うところまで含めて。
そして何度生まれて何度死んでも繰り返し繰り返し巡り合って、最初と最後に愛するのは「君」だって断言しているところと「深い傷」を抱えても悲劇でも繰り返し君に会いたいっていうところは、英二が言いそうだな、と思った。
しかしKinKi Kids、こうして改めて考えてみるとめっちゃ究極の運命を歌っているな……。「H album -H・A・N・D-」2005年発売って超びっくりなんだけど!!15年以上も前に思えない、もっと最近のアルバムだと思っていた。

solitude〜真実のサヨナラ〜(KinKi Kids「F album」)

“サヨナラ”繋がりになるんですけど、この曲はアッシュ→英二の曲だな、と思う。ずっと孤独だったアッシュの唯一の心の拠り所だった英二のことを、アッシュはずっと手放したくないと思っていたけれど、その一方で英二のこれからの人生を思って別れを決断するんですよね。「solitude〜真実のサヨナラ〜」では、“いつかまた出会うための別れ”が描かれていて、そこがアッシュと英二の運命にも当てはまると思いました。
また、「真実(ほんとう)の僕を気づかせてくれたのは君の笑顔だけだったから」「真実(ほんとう)の僕に気づいてくれていたのは君の涙だけだったから」というフレーズを聞いていると、自分が抱える痛みや罪の意識を理解した上で寄り添ってくれた英二に対するアッシュの気持ちってこんな感じだったのではなかろうか……、と思えてきます。
ちなみにこの曲、あまりKinKi Kidsのコンサートでは歌われないんですけどキンキファンになる前からなんとなく好きだった曲で、MDが流行ってた時代からよく聞いてた。MDプレーヤーで聞いてたときはこんなに長く好きでいると思ってなかったな、懐かしい。
 
この他にも、「辛い時は君の杖になろう」「君を支えたい いつも君の側で」という歌詞に、英二からアッシュに対する包み込むような眼差しを思う「Love is…〜いつもそこに君がいたから〜」(KinKi Kids「I album-iD-」)、「君を一瞬でも離さない 離したくない」に始まり、2人の普遍的な関係性を歌う「もう君以外愛せない」(KinKi Kids「D album」)、この愛情だけが「君」を包み込み、照らすからそれ以外には“何もいらない”という、刹那的でありながらも確固とした覚悟を感じさせる言葉が“英二を/アッシュを誰にも傷つけさせない”と心に固く誓っていた2人にダブる「彗星の如く」(KinKi Kids「O album」)などなど、「BANANA FISH」み溢れるKinKi Kidsの曲がたくさんあります。
 
ここに挙げていない曲でも、もしかしたらまだまだありそう。KinKi Kids、彼ら自身の関係性にもどこか当てはまるような“2人組”の関係性を多く歌ってきているので……。『BANANA FISH』とKinKi Kids、それぞれの世界を行き来することで両方の描く世界観をより深く探れるような気がしていて、しばらくその探究を楽しみたいと思います。