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タイドラマ Who Are You เธอคนนั้น คือ ฉันอีกคน - “私は誰?”を探す物語

GMMTVのタイドラマ「Who Are You」をYouTubeで完走しました〜!!Namtan主演、Krist、Kay、Janがメインキャストの「Who Are You」。すごい集中力を要するドラマだった……。視聴している間ずっと心が「Who Are You」に持っていかれっぱなしでした。

ざわざわしたり、学生時代のことを思い出したりしつつ、登場人物の気持ちや人間模様を考えながら見ているとどんどん引き込まれていった。主演のNamtanがとにかく超良かったです。一人二役こなすだけあって、表情の振り幅や身にまとう空気の変化がすごい。

あとKristくんは泣きの演技の引き出しが多彩でびっくりした。涙の粒の大きさとか流すスピードまで計算してるんか?というぐらい感情の波にピタッとハマっていて感動しました。

 

ただ、物語の重要な部分を担う要素の1つである“いじめ”の描写が残酷で、いじめの場面があると知ってて見ていても結構辛かったです。何らかの“フラッシュバックを起こしてしまうかもしれない”と思う方は無理せずに見るのをお休みする、不穏な雰囲気になったら音声なしで倍速で見る、飛ばす、もしくは視聴をストップした方がいいと思いました。

でもEP.1の冒頭からまさにそのめっちゃ苛烈な場面なんだよな……。トレイラーにもいじめの場面が映ってるし。かなりリアルだしショッキングだと思います。

特にEP.1は、「自分は大丈夫!」と思う方でも、ある程度心に余裕と覚悟を持って見た方がいい、と私は思う。疲弊してる時に見るとしんどくなっちゃうと思うので(いじめの描写が出てくるEPは主にEP.1、EP.6。でもリフレイン的に他のエピソードにも結構散りばめられている)。

魚醤や小麦粉を頭からかけられる場面もすごい嫌だけど、あの教室の隅のカーテンに隠れていじめっ子がマインドを取り囲むシーンもものすごく嫌〜〜〜な感じに演出されていて、とっても心がえぐられた……。

「Who Are You」は韓国のドラマ「恋するジェネレーション」をリメイクしたドラマですが、「恋するジェネレーション」の1話を見た限りでは、同じいじめの場面を比較するとタイ版の方がさらに陰惨な雰囲気になっていると感じました。やってるいじめの内容はどちらも酷いんだけど。

でも、最初に書いたように“いじめ”は物語の中の1つの大事な要素なのであって、”いじめ”が主題というわけではありません。「Who Are You」では「自分自身にどう向き合うのか?」ということを、様々なキャラクターを通して描いている。いじめや学校における人間関係をはじめ、大事な人の死や、自分の将来、子供の将来、親との軋轢など、それぞれ問題を抱える登場人物が各々自分のアイデンティティってどうやって自分のものにするんだっけ、ということを模索していく物語だと思っています。

 

※ここからはネタバレしながら感想を書いていきたいと思います。ちなみに、この「Who Are You」、初めて見る際はネタバレ回避した方が絶対に良いと思うので、もしまだ見ていなくて気になっている方はぜひまず見てみてください〜!EP.18まであって結構ボリューミーですが、全部YouTubeで見られるし、ほぼほぼ日本語字幕をつけてくださっています!とってもありがたかった……。ありがとうございます。

 

 予告からして不穏というか怖いんだよな〜。ちなみに私は視聴前に予告映像を見た時に一旦回れ右しました……。怖がらせるわけではないんですけど、ちょっとやっぱりいじめの描写が凄くて……。

でも見所も、考察しがいもある良い作品なので、平気な方にはぜひおすすめしたいです。大事なことなので先に言いますがKristくんの役はかわいいです。心の癒し。

 

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〈あらすじ〉 

高校生のマインドは、ティダーをはじめとするクラスメイトから執拗ないじめを受けていた。周りの同級生からは無視され、ティダーの策略によって学校側からも退学を言い渡される。絶望したマインドはある日川の中に身を投げてしまう。しかし、マインドは奇跡的に命拾いし、今までの記憶を一切失った状態で病院で目を覚ます。病院に駆けつけていた周囲の人々からは「ミーン」と呼ばれ、マインドは自身の記憶を失ったまま「ミーン」として生きていくことに。実は「ミーン」は、生き別れになっていたマインドの双子の姉だった。

母親や友人、幼なじみのナティーですらマインドを「ミーン」だと信じて疑わない中、幸せな新生活を送っていたマインドは徐々に自身の記憶を取り戻し、過去の苦しみも思い出していく。全てを思い出したマインドはどうなるのか、ミーンはどこへ行ったのか。そして、ミーンが抱えていた問題や、ミーンの友人たちとマインドとの関係性はどうなっていくのか。

〈主な登場人物〉

・マインド/マニタ・エウラック(Namtan)
プラチンブリの孤児院で暮らす高校生。孤児院で一緒に暮らす子供たちの面倒を見るなど、思慮深い性格で優しい。一方で、正義感が強く、間違っていることや困難なことに対しては真摯に向き合おうとする。ピンクとかふわふわしたものが好きで可愛らしい感じの女の子。ミーンは双子の姉。

 

 ・ミーン/ミーンナラ・ナンニチソパー(Namtan)

バンコクで優しい母親と2人で暮らす高校生。何においても物事をはっきりと言う性格で、不快な時はためらうことなく不快感を表す。イライラしているように見えることも多いが、芯の通った性格でクラスメイトからは慕われており、友達も多い。思ったことをはっきり言う感じがかっこいい。あとメイクもマインドよりもしっかりめで、友達とおそろコーデするなど年相応に高校生活エンジョイしてる、どっちかというとイケイケな子だと思う。マインドは双子の妹。しかしNamtan一人二役とか本当に信じられんな……。マインドとミーン全く違う人に見える……。

 

・ナ/ナティー・ワナチャレン(Krist)

ミーンの10歳の時からの幼なじみ。水泳の選手として一目置かれている存在。実は子供の頃は水が怖かったが、ミーンのおかげで水への恐怖を克服し水泳選手を志した。ミーンのことが好きで、よくミーンの頭をぐしゃぐしゃなでる。そして手を振り払われる。ミーンから冷たくあしらわれていても、幼い時から性格をよく知っていて仲も良いため特に気にしない。っていうか常に冷たくされているのでそうじゃないとむしろ「え?」となる。父親と2人で暮らしており、父親思い、なおかつ優しい性格で素直。

物語の不穏さを和ませてくれるような存在、まじで。ナティーが登場するたびに癒されたわ……。

 

・ガン/ガンカン(Kay)

ミーンやナティーのクラスメイト。同級生からは変わり者扱いされており、授業中は突っ伏して寝ている、ランチは1人で食べるなどクラスからは浮いた存在。ひょうきんに振る舞っているが、素の感情をなかなか見せない。学園の理事長の息子だが、同級生には隠している。幼い時に両親の離婚を経験しており、父親に対して良い感情を持っていない。“クラスに誰も本当の自分を知っている人がいない”という共通点からマインドと仲良くなり、マインドを好きになる。おどけたりふざけたりしているように見えるけど、実は人のことをとてもよく見ている子。もし少女漫画だったら絶対この子と主人公が恋に落ちるパターンになると思う。さりげなくマインドのことを助けてくれる感じとか「えっ、これは好きになるの不可避やろ」と思いながら見てた。「(ミーンとして生きるなら)もっとミーンらしく振る舞えよ」ってマインドに言ったところ、マインドの性格もわかりつつ鼓舞してる感じがあってめちゃめちゃよかったな……。

 

・ティダー/ティダー・トライウィサクル(Jan)

プラチンブリの学校でマインドをいじめていたリーダー格。父親が検事で権力・財力を持っている。プライドが高い。マインドに対するいじめが容赦なく、執拗かつ陰湿。マインドを貶めようとすることへの執着心がまじですごい。病院でマインドを見るだに髪の毛を引っ張りに来たシーンはびっくりしちゃったよ……。どんだけマインドに対するアンテナ敏感なのよ…。明らかに怪我して弱ってる人の髪の毛引っ張らないだろ、普通。あのティダーのいじめる時の表情の迷いのなさと、ドーパミン出てる感じがすごい怖くてJanすごいと思いました。

 

マインドの“生の肯定”を獲得する

ティダーがマインドに向かって言い放った「あんたがあんただから嫌いなのよ、マインド」という言葉に象徴されるように、マインドは自分の存在を否定され続けてきて、心の拠り所がなかった。「あんたがあんただから嫌いってなんやねん」と思うけど、マインドが存在していること自体が許せないってことなのでしょうね。

マインドは孤児院でもみんなのお世話をするお姉さん的役割を果たさなくてはならなかったし、いじめっ子グループの他の同級生は見て見ぬふり、先生も助けてくれない。どこにも自分を解放する場所がなかったから、自分自身で自分の生を否定しようとした。“マニタ・エウラック”の名札を投げ捨てるところが印象的でした。

雑誌「タイドラマガイド『D』vol.2」(2021年3月末発売)の「Who Are You」の紹介ページには、「愛と再生の青春ミステリー」という見出しがついているけど、まさに「Who Are You」は”再生”の物語だと思う。この物語で問われているのは、無視され否定され続けてきた“マインドの生”をどうやって取り戻していくのか?というところ。

マインドは奇跡的に一命を取りとめて、ミーンとして文字通り新たな人生を歩み始めるかと思いきや、すぐに失っていた記憶が蘇ってくる。記憶を取り戻した時のマインドの絶望に満ちた表情を見ていると、周りの人から愛されているミーンとしての幸せな暮らしと本来の自分との対比が乗っかった分ものすごく苦しくなったんだろうな、と思った。記憶が戻ったことで「ママにも、ナティーにも、ライラやキャットにも、愛されていたのは“私”じゃなかった」ことにマインドは気が付いてしまった。

 

そして、ミーンの墓前でマインドがクワンさん(ミーンのママ)に全てを打ち明けた場面でも“マインドという存在”が問われている。というのも、あの時点では「川から救助されたのはミーンではなくマインドで、ミーンは亡くなっていた」ということが判明したところ。

クワンさんの選択肢としては「マインドを家族として連れて帰る or not」だったと思うんだけど、そこでクワンさんは孤児院に戻るマインドと一旦別れてから、思い直して「ミーンとして一緒に暮らしてほしい、私にとってはあなたはミーン。私たちはお互いのために一緒に生きていこう」と言って引き留めるんだよね。

私としては、「いや、一緒に暮らすのは良いし気持ちはわかるけど、“ミーン”としてじゃないとダメなの?」というところに引っかかりました。「マインドはミーンの家族なんだし一緒に暮らすならマインドとして引き取って暮らせば良いじゃん……?マインドもプラチンブリからは離れられるわけだし……」と思って。双子の姉妹だとは言え、そしてクワンさんがマインドにミーンを重ねるのも仕方ないとは言え、「身代わりになってくれ」というのはなかなかにすごい発言だと思った。

まあやっぱりそこはいきなり娘をいきなり失ってしまって気持ちの整理がついていなかったから「ミーンになってほしい」って言っちゃったのかな。大切な人を亡くしたばっかりだったから混乱してたのかもしれません。後々マインドに対して「あなたの気持ちを考えられなくてごめんね」って言ってたし。それに、マインドと過ごした時間もクワンさんにとってはミーンと過ごした時間と同じように大切なものだったのだとも思う。

でもな〜〜、それでも、自分を助けようとして亡くなってしまったミーンの身代わりをしながら生きていくなんて、マインドに「苦しみながら生きてくれ」って言っているようなものじゃん。マインドにとってはミーンの死に対する十字架の重みと24時間365日向き合わなくてはいけないことになるし(身代わりにならずともそうかもしれないけど)、本来の自分のことは嫌だったこともそうじゃなかったことも全て封じ込めないといけない。

マインドは生き残ったけれど、マインドとしての生は否定されたわけですよね。クワンさんが言ったことって突き詰めて考えると「ミーンの死は肯定できないけどマインドの死は肯定できる」ということになってしまう。

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Who are you เธอคนนั้น คือ ฉันอีกคน [Official Trailer] cr.GMMTV

ただ、振り返ってみれば、「ミーンの身代わりとして生きる」というこの時の選択は、一度自分自身で生きることを否定して限りなく”死”に近い状態を経験したマインドが、「マインドの生をどう肯定していくのか?」という“再生プロセス”の始まりの地点だったと思う。つまり、自分をあえて封じ込めて「ミーン」として生きることで、むしろ浮き彫りになってくる「マインド」という人間を自分で振り返るための時間、マインドが自身と向き合うための時間になっていた。ミーンと自分の違うところを日々発見しながら、自分のアイデンティティと向き合っていたんじゃないかな、と思う。

マインドとミーンは双子だから姿形はそっくりだけど、話し方が違う、好きなものが違う、書く文字が違う、得意なことが違う。周りの人々から聞こえてくるミーンの人となりや特徴を知っていく内に、マインドは自分自身のアイデンティティもよりはっきりと意識するようになったんじゃないかな〜〜と思うんですよ。

だからこそ、最終回でナティーに対して「私はナティーが好き」って言えるようになったし「自分に向き合う時間がほしい」と言えるようになった。多分以前のマインドだったら“自分に向き合う時間がほしい”なんてとても考えられなかったと思う。それどころじゃなかったから。

 

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Who are you เธอคนนั้น คือ ฉันอีกคน [Official Trailer] cr.GMMTV

マインド、こうして書き出してみると何回も何回も存在を否定されてきていてなんか本当に腹立たしくなってくるな……!ナティーですら途中で否定するしな〜〜〜(EP.13参照)!!!自分の怪我と、ミーンが実は亡くなっていたっていうショックと、マインドがミーンに成り代わっていたっていうショックでトリプルショックだったナティーの気持ちも痛いほどわかるんだけども、自分を気にかけているマインドに向かって「僕たちはなんの関係もないでしょ」って言うのはひどいよ……。本当に本当にめちゃめちゃショックを受けてしまった……。視聴当時の私のスマホのメモに「ナひどーいひどーい、マインドだって関係あるやろひどーい」っていう語彙力0のメモが残っていた……。

話を戻すと、そんな中でも、ミーンだけは本当に最初から最後までマインドの存在を肯定し続けた人なんだよね。マインドが自分と向き合っていくには、「私にはP'ミーンがいる」っていう心の支えも大きかったんだと思う。

ミーンはマインドが孤児院で暮らしている時にずっと贈り物を送り続け、水中からマインドを救い出し、マインドに自分の代わりに幸せな生活環境を与え、マインドをいじめていたティダーに立ち向かった。だからマインドの1番の心の拠り所はミーンだし、その逆もまた然り。

ミーンは、“クワンさんに引き取られるはずだったのはマインドだった”という思いが心の底にずっとあって、「マインドもどうか幸せに生きていてほしい」という思いが自分が生きていく上での心の拠り所になっていたし、今後もその思いがずっとミーンの中にはあり続けるのだと思う。

ちなみにミーンがガンに対して「あんた妹のこと好きなのよね?めっちゃわかりやすい。妹のこと追っかけてるの嫌なんだけど。マインドの気持ちは聞いたの?」ってわざわざ聞くところ、ミーンがマインドのこと本当に大事に思ってるんだなってことがわかるのと、笑っちゃうぐらい容赦無い言いようがとても好きです。笑った。ミーン、マインドのこと超心配してるじゃん。予防線張ってるじゃん……。言いたいこと言って勝者の笑みを浮かべながら去っていくミーン好きだわ。

 

“自分は誰なのか” という問い

マインドの自我への問いがメインなのはもちろんそうなんだけど、その他の登場人物もみんな「アイデンティティと他人からの承認」を模索している。つまり自分が自分であるための拠り所をみんな求めている。

例えば、序盤で登場するミーンのクラスメイトのコイケオは「人の目に自分という存在が映らないということ」に対して葛藤を持っていて、人からの注目を集めるために金銭でどうにかしようとしていたら、いつしかクラスメイトからATM扱いされるようになってしまった。

また、ナティーは幼い頃の自分のトラウマを克服したことで、自分の生きる道筋となった「水泳」に自らの全てを捧げていて、周りからも水泳選手としての期待を集めている。だからこそ、怪我によって選手生命が揺らいだ時に「水泳」という自分のアイデンティティを失いそうになっていることに対してひどく絶望してしまう。

ガンは親からの愛情や承認を心の底では渇望しているけど、溝が深すぎて全く親のことも周囲のことも全く信用していない。そして自分自身のことも空虚な存在、嘘にまみれた存在だと思ってる。

その他にも、教育ママのほぼ言いなりにならざるを得なかったピートや、ずっと憧れていたモデルの夢を叶えるために撮影に臨むも思うようにいかず、ナティーの方が良いポジションにいることに対して失望してしまうキャットも、自分を見失いそうになっている様子が描かれている。不正に手を染める学園長(ガンの父親)も元々は良い教師だったのに保身に走ったが故に、従来の自身の教師像からはかけ離れた教育者になってしまう。

この、それぞれの自我の揺らぎや喪失、取り戻そうと奮闘するところがすごく丁寧に描かれているところが「Who Are You」のいいところだと思います。自らと向き合うことの痛みをみんなが感じている。

 

で、じゃあティダーの自我ってなんだったんだ?と考えてみると、ティダーって自分が思っている以上に「自分の思い通りに物事を進める」ことが障壁なく、スムーズすぎるほどにできてきた子なんじゃないかと思うんですよ。ママは娘のやることなすこと全肯定だし、パパもさりげなく娘がせがんできた謎の筆跡鑑定してくれるぐらいだから権力使って色々アシストしてくれるし。しかも成績も良い。そして歯向かうと色々と怖いのを知ってるから、学校の同級生も先生も言うことを聞いてくれるし、取り巻きになってくれる子だっている。だから、自分が思っている自分こそが正しくて、それが揺らぎようがなかったんじゃないかな。

そんな中で、最初に抵抗してきたのがマインドだった。ティダーがマインドに向けて放った「あんたがあんただから嫌い」っていう言葉を因数分解していくと、ほとんど拒絶に近いというか、存在そのものが受け付けないっていうことですよね。マインドっていう存在を排除しないと自分の思い通りにいかなくなるし、自分という存在が揺らぐから。

でも、皮肉なことに、マインドと対峙するようになってから、ティダーは自分に執着すればするほど、より強く、誰よりも憎いはずのマインドのことを意識している。鶏が先か卵が先かじゃないけれど、目的と手段が入れ替わってることにティダーは気がついていない。そのせいで、ティダーのやってることって明らかにどんどんズレていて、本人にとっても無意味なことをやっているのにそれに全く気がついていないんですよ。

だって、あれほど疎ましく思っていたマインドは自分の目の前からいなくなったんだから、それをわざわざ探し出してみんなの前で晒すその労力、ティダーの人生に必要なくないですか?あんなに富も知も持っていて。しかも、マインドを追い詰めたのは自分なのに、そこでマインドが実は生きていたって判明したら一番困るのはティダー自身だってなんでわからないんですかね?

しかも、誰もがマインドはすでに亡くなっていると認識していた中で、「いや、マインドは絶対に生きてる!ミーンがマインドだ!みんなの前で暴露して追い詰めてやる!」と躍起になってたティダーって、マインドの生をある意味誰よりも信じていたってことですよね。でも、ティダーが言っていたように最終的にマインドが生きていて、ミーンに成り代わっていたことが明らかになっても、ティダーの思惑通りの結果にはならなかった。

 

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Who are you เธอคนนั้น คือ ฉันอีกคน [Official Trailer] cr.GMMTV

ティダーは“自分が正しいと思っていることが全てではない”ということをもっと早く誰かから教わっていればもうちょっと違う生き方ができたんじゃないか、と思う。

そして、それを最初に教えたのがマインドであり、その次にミーンだった。マインドの真っ向勝負のアプローチとミーンのアグレッシブな”てめーには負けねえぞ”アプローチ、この両方があって、最後に若干ティダーに変化の兆しが見えるようになったのでは?不器用なりにマインドに向き合おうとしたのは、ティダーにとっては大きな進歩だったと思う。

ただ、ティダーがこれまで失ったものはあまりに大きいし、マインドもその他の人たちも、ティダーのせいで本当にたくさん傷ついた。そして物語が終わる時点では、ティダーはまだ謝れなかった。謝れば良いということでは決して無いんだけれど、彼女にしっかり向き合える立場の人がちゃんと向き合わないことには、本質的に何が間違っていて、何がティダーにとって必要だったのかを理解するのは中々難しいのではないかな。ティダーが自分とちゃんと向き合える日が来ていると良いな、と思う。

付随して、「Who Are You」では、安直な理由づけがなされていないところがとても良いと思ってる。端的に言えば、「ティダーには心の闇があったからいじめに走った」的な描き方がされていない。

実際には心の闇もあったのかもしれないけども、悪は悪として描き切ったし、ティダーの弱さも「それはそれ」として描かれている感じがした。ティダーに限らず、人間性を構成する複雑で色々な側面を、なるべく単純化せずに複雑なままで描こうとしているところがとても良かったな、と思っています。

前述したことと矛盾するかもしれないけど、例えばクワンさんがマインドに対して「ミーンになってくれ」って言ったことも、全く合理的じゃないし納得はできないんだけど、なんか理解はできるというか、「めちゃくちゃなことを言ってしまう心理状態ってあるよね」というのがわかる描き方になっていると思う。

その他 思ったこと

 ・いわゆる“その他大勢”の描き方もすごく印象に残っている。1人1人が言ってることはたいしたことないんだけど、大勢で誰かを糾弾したりいじったりする時の暴力性とか、大勢で無視する、無関心を貫くことの消極的な攻撃性とか、集団になった時ならではの残酷さがありありと伝わってきた。物語序盤でひと段落しちゃうから忘れがちだけど、コイケオに対するクラスメイトの不誠実さってすごくないですか?ライラもキャットも、先生との面談でコイケオに金銭を求めたことなどないかのように平然と嘘を吐いている。直接は関係なくても、無関心でいることや、大勢になんとなく同調することが誰かを弾き出すのにとても有利に働くということがよくわかる。

・ミーンのママ含め、きっぱり強めな母親がたくさん出てくる。個別指導の集い?ママ会のシーンが度々出てくるのですが、集っているママがみんなキラキラしていてみんな主張が強い感じ。お金持ちが通う学校という設定なのかな。

・ぬいぐるみが好きでふわふわ笑っているマインドがめっちゃかわいかったです。あの図書館でナティーと2人で喋ってる時のピンクのふんわりニットも「THE マインド」な感じがしてかわいかった。マインドは泣いてる場面がとても多いので、屈託なく笑ってるとそれだけでもう「安心する……」となった。

・ミーンの登場シーンは割と全部好きですが、ナティーから頭を撫でられようとした時に跳ね返したり頭をどつき返したりする時の瞬発力が「仲良しなんだな〜」ってわかる感じの間合いでよかったです。ミーンの立ち振る舞いを見ていると、自信があって、誰が見ても魅力的な女の子って感じがする。みんなから信頼されて好かれているのが納得できると思った。

・ナティーはミーンに対してふにゃふにゃ喋ってる時と、マインドに向ける優しい眼差しと、お父さんとおうちでご飯食べてる場面がいつもめっちゃかわいかったです!ざらついた心に癒しをくれてありがとう。ミーンに対して「僕の片思いにさよならを言いに来た」って言った場面を見て、ナティーって本当に誠実で一途な子なんだなと思ったし、それに対して「私も一度自分に対して問いかけてみたの」って返すミーンもまた誠実で良かった。

・Namtan  & Janのコンビネーションが好きだったので、今度がらっと変わって仲良しな役柄も見てみたい。親友とか、恋人同士とか、先輩後輩とかも良いね。ポップでハッピーなドラマでまた共演してほしい。

 

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