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椎名林檎と、「女」であることについて考えた

ライブ「(生)林檎博'18 −不惑の余裕−」をさいたまスーパーアリーナに見に行ったのだけど、林檎のライブに感極まったし、思わず自分の人生走馬灯モードになってしまった。

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私はあまり性別どうこう、という考え方は持ちたくないと考えているのだけど、それでもどうしても物理的に、そして対社会的に女でいることが辛いと、ここ最近より一層考えるようになっていた。

 

しつこくお酒を飲みに行こうと声をかけられて、お酒を飲んだ後に何が待っているのか、過去の私は知っておくべきだった。

また、信頼できるかもと思っていた相手が、飲んでいる時にわざと終電を逃して家やホテルに誘導しようとする事は、世間的にはあっておかしくない事らしい。

それでも周りの友達もちゃんと恋愛を楽しんでいるし、恋愛しなきゃと躍起になって、婚活パーティーに参加してみた時に感じた、"品定めの目線"。

 

これまで私が、恋愛や性愛に躓いてきた本質的な原因はそこではないと思うが、女の形をした自分を呪ったり、フットワークの軽さを履き違えた自分の軽率さを後悔したりした。少なくとも私にとっては、恋愛は楽しいものではない、という実感を得た。シンプルに、なんか別に楽しくなかった、そして疲れた。 

なぜ、1人で生きていくことや、結婚という選択肢を選ばずに生きていくことに対して「かっこいい」って思ってくれる人が増えないんだろう。何歳になっても結婚していない人は「どっかに問題ある」んだって。どういうことなの、それ。そんなに結婚って確かな基準なわけ?

特に、セックスや恋愛に関しての「嫌なこと」に対して我慢を強いられがちなのはなんでなんだろう。大多数の人が持ってる欲求を持たないこともあるって、友人にすら理解してもらえずに「ズレてる」という言葉で片付けられるのを、これから先も見過ごしていかなければならないのか?

社会人になって2年を過ぎたあたりから、友人と飲みにいった時のもっぱらのトピックは「結婚」になった。私たちの間では「最近どうなの?」は、「良い人できた?」か「彼氏とどうなの?」という意味になる。

私の人生計画の中で仕事が一番大切であっても、「最近どうなの?」に対して仕事の話をしようものなら一気に興ざめになるし、「へえ、大変そー(どうでもいい)」って必ず言われるだけ。別に友達と仕事の話をしたいわけでもないけどね。なんか、会社の人に言えないこととかもあるし、良いかなと思っていたんだけど。あと、自分が選ばなかった男をむやみやたらに勧めてくるのも、もうやめてほしい。全く望んでいないし、私が卑屈モードになっていると特にマウンティングされている気分になる。なんか振り返って書いている今もしんどくなってきた。

私が自然に私らしくいることが、まさかこんなに難しくなるとは思っていなかった。友人が悪いとか、社会が悪いとか、そんな事を言うつもりはないけど閉塞感がすごくて潰されそうだ。思春期ばりのモヤモヤメンタルなんですが、これがいわゆるこじらせメンタルですか?こじらせって言われるの腹立つから思春期ばりモヤモヤメンタルの方が良いと思います。こじらせより厨二病の方がまだ良いな。

椎名林檎の曲を大人になってから改めて聞いてみると、椎名林檎は女に生まれた事で生じるある種のしんどさや呪いのようなものを知っていて、それを普遍的に、なおかつ平らにして表現してくれているんじゃないか、と思うようになった。刺すような鋭さはもっているけど、もう攻撃的じゃない。柔らかくも強い表現ができる、というところに彼女の凄さがある。積み重ねてきたキャリアと、ポップス作家であることへの堂々とした誇りを感じる。

ありきたりな女

ありきたりな女

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カーネーション」「ありきたりな女」「人生は夢だらけ」は、これからもずっと一緒に歩いていくような曲だな、と改めて実感した。一回もう、色々諦めよう。前向きになるために。自由になるために。林檎の生歌を聞きながら、さいたまスーパーアリーナでそう思った。

  

獣ゆく細道

獣ゆく細道

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あと、「獣ゆく細道」は本当にクリーンヒット!で痛快な曲だったなと思う。エレカシ・みやじの隠された(?)ジャジーな魅力を引っぱりだして、才能と才能のせめぎ合いを見せている。私の中では椎名林檎宮本浩次に挑戦状叩き付けてるようなイメージです。林檎博で本物のデュエット見る事ができて本当に嬉しかった。椎名林檎の個性に喰われず自らのパワーにしていくみやじ、マジで凄い人だと思ったし、それでいて横にいる椎名林檎も涼しげな空気感出してるの、ヤバい×ヤバいの相互作用……と思っていました。

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。

 

 

ちなみに……椎名林檎から話題がズレますが、小川たまかさんの『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』という本も、私のモヤモヤメンタルを前向きな方向性に導いてくれた。「あれは私が悪かったんだ、落ち度があったんだ」みたいな自己嫌悪や後悔を、そういう事ではないとはっきり言い切ってくれる。綿密なリサーチと、著者の視点が明快に書かれていて、読んで本当に良かったと思った。