文を書く in TOKYO

ファッションとエンターテインメントについてふわふわ語る

おめかしは威嚇

お題「好きな作家」

私にとってはおめかしは威嚇。

日々の服は戦闘服だし、コートなんて身体ごとすっぽり、防御シェルターみたいな感じで守ってくれているじゃないか。正月に防御力強めな、足首くらいまで丈が長いコートを着ていたら、イタリアンのお兄さんに「ジブリみたいっすねー!それ!」と言われた。ジブリってどのジブリだろね…黒コートで思いつくのカオナシぐらいなんですけど…?

攻撃力高いアイテムはバッグ。昔、展示会の受付やった時に、色々なお客様のバッグをお預かりして、色々見ていると楽しかったし、とても立派なバッグを仕事用にしているお客様を見ると「負けてらんねえな!」みたいな謎の闘志が湧いてきた。でも4年間ぐらいバッグ変えてない、そろそろ変えたいんだけど。

昔、ドラマの「ストロベリーナイト」を見ていて、竹内結子演じる姫川が仕事バッグに赤のバーキンを使っていたのがうらやましくてずっとバーキンが欲しいって思ってた。バーキンなんて現実世界でお目にかかったことすらそんなに無いな、そういえば。夢は見るだけならタダだからいいか。

 

最近服にまつわる小説を読みました。

綿矢りさ『ウォークイン・クローゼット』と川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』。

綿矢りさは、いつも「そうだよなあ!」と共感させてくれる心情描写が心地よくて良い。川上未映子は、読んでいると「うっっ……そうだ…けど…ちょいしんどいわ。」って思う。小説は生々しいリアルを描いているというか、少しぬるっとした質感がお好きな感じがする。でも、エッセイはめっちゃ笑えるし、からっとした方なんだろうなあと親近感が湧いてくる。

 

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『ウォークイン・クローゼット』は二十代後半の、洗濯が趣味な女の子の話。幼なじみの女の子はタレント、男友達はアパレル販売員のアルバイトを渡り歩いている男の子、と出てくる登場人物もなんだかファッショナブル。主人公のクローゼットには“対男用”のデート服が並び、タレントの幼なじみのウォークイン・クローゼットには、スタイリストが選んだ、きらびやかで上質なブランドの洋服がずらりと揃う。デート服と、公の場に出るときの衣装。

“私たちは服で武装して、欲しいものを摑みとろうとしている。”

目的は違えど、2人にとって、自分のクローゼットにある服は戦闘服だ。

あと、個人的にとても共感したのは、自分の洋服を前に、「何を着たら良いのかわからない状態」に陥る場面。

“迷うなら、いっそ会う人にどう思われるか考えずに、本当に自分の好きなカッコをしてみたら?自分に提案してみるけど、こうしてクローゼットの中の服たちをベッドの上に出したら、本当に着たい服なんて一枚も無い。(中略)爪をかみ、散らばった服を眺めながら時間だけが過ぎてゆく。”

主人公は、常に会う人ごとにコーディネートを考えていたから、全く異なるグループの女友達と男友達に同時に会う約束をしてしまった時、何を着ていけばいいかわからなくなってしまう。

私の場合は、ちょっと非日常的なイベントがある時に起こりがちかな。舞台の時とか、都会に出かけなければいけない時とか。今まで何気なく着ていたコーデもなんか今日はしっくりこない、かといって冒険の組み合わせもピンとこない。何を着てもイマイチで、着たい服がクローゼットの中に無い。あの瞬間なんなんでしょう?本当に。結局イマイチなまま1日過ごしたことも何回もある。そういえば、服を買う瞬間は、持っている服との組み合わせは考えても、どんな時に着よう、ってことまではあまり考えないな、と気付いた。お出かけする時にも着られるだろうと思っていても、いつの間にか近所に行く時しか着ていないような服もある。

印象的だったのは、タレントの幼なじみが自分の服をありったけ段ボールに詰めて主人公にあげてしまう場面。自分を高めてくれる洋服達を、すっかり友達にあげてしまうその爽快感が清々しい。あと、もらった方の主人公は、すぐには着こなせないことに少しがっかりはするけど、自分なりに着こなしてみせるぞ!というポジティブな姿勢にすぐ変わっていくのが良いね!という感じ。今まで“対男用”の服しか持っていなかった女の子が、素敵な服を手に入れて、これから「自分」を磨いていくであろう予感をさせてくれるところが、良いなあファッションってそういうものだよなあと思いました。

 

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『すべて真夜中の恋人たち』にも、友達が良い服をたくさん送ってくる場面がある。こちらはブランド服からヒール靴、新品の下着までトータルコーディネートの宅配便。

“聖の洋服がラックにまじってしまうと、まだそこにかかってあるわたしの服は何もかもが急に色あせてみえた。”

この後主人公は自分の服を捨て、もらった服を身につけてデートに繰り出すのですが、やっぱりデートの気持ちを盛り上げる服とか装いって大事なんやな。ちゃんと気分が盛り上がっている、浮ついた感じが描かれていて、キラキラとしたデートが展開される。心理描写と相まってロマンティックなシーンになっています。

まあ、この服を送ってきた友達、めっちゃ押しの強い感じで強烈。自己主張が強いことは素敵だし、この友達もいいやつなんだけど、何にせよ押しが強い。友達と主人公の言い合い(というか、この友達が一方的にけしかけてくる)のシーンがあるんだけど、友達の言っていることがとても核心を突いていて、私は「ウッッ」となりました。人付き合いが苦手な主人公に向かって、「他人と関わっていくのはそもそも面倒なこと、それを回避して自分は傷つかない場所にいながらセンチメンタルに浸っている生き方って楽だけどどうなの」みたいな指摘を畳み掛ける友達、まじ怖……と思いました。私も思い当たる節ありで、「あ、私もそれやってるわ…。」と思って若干反省した。

ちょっと話がそれますが、気の強い友達キャラ、好きです。この『すべて真夜中の恋人たち』における聖もそうだし、『図書館戦争』の柴崎とか、『はいからさんが通る』の環とかね。自分が思った事ストレートに言ってくれる人、しんどいけどありがたいのよね。

 

あと川上未映子ってとってもファッションが好きなんですね。インスタとか見てるとキラキラしているし、フリルとかリボンとか、キラキラとか、女の子が好きな王道!っていうディテールの服がお好きのようです!もっとクール美人系の人だと思っていたので意外だった。でもクールフェイスにフェミニンの組み合わせ、素敵。ファッションについてのエッセイ『おめかしの引力』も読みました。

 

おめかしの引力

おめかしの引力

 

 

 川上未映子コレクションの凄さにびっくり。いや、ベストセラー作家なのだから当たり前と言われれば当たり前なのですが、バーキンもケリーも持っていて、ドリス ヴァン ノッテンやアレキサンダー マックイーンのブラウス、トーガのワンピなどさすがに良い服をたくさんもってらっしゃる…!旦那さんはエディ・スリマンが好きとかおしゃれやなあ。

 

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面白かったのは、「ワンピースと納豆」のエピソード。新品のワンピとヒール、化粧もばっちりで向かった先はスーパー、結局納豆を買っただけで帰った、というお話なんだけど、「あるある〜」と声が出た。メイクアップして、おしゃれな服を着て、薬局だけ行って帰ってくることなど頻繁にある。私の場合は化粧終わったあたりで体力を半分ぐらい消耗して、出かける気力が維持できないからなのですが、川上さんはそれとは違い、おしゃれしたい欲が抑えられないから、キメキメの格好でなんとか出かけたい、という思いでスーパーに向かったという。ある種、おめかしモチベーションの高さを感じる。

あと、マノロラニクのパンプスにも言及していて、マノロの靴は本当に歩きやすいのだと、改めて思った。こんなに誰もが口を揃えて「歩きやすい」というヒールなんて他にあるだろうか。

 

kyanakoforyou.hatenablog.com

 『おめかしの引力』面白く読ませていただきましたが、ファッションエッセイってどうしてもトライ&エラーの話になるよなあ……とぼんやり思った。群ようこの『衣もろもろ』とかもそう。

 

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みんな苦戦しながらおしゃれしている。そう思うと少し心強い。